2011年4月5日火曜日

冬期・厳冬期の振り返り

4月になりました。結局、3月は一度も山に行くことができませんでした。
地震の後はしょうがないとしても、3/5-6の週を見送ったのは悔やまれる
ところです。

3月に入って今期の冬期・厳冬期のレビューを書こうと思っていたのですが
地震もあり延びていました。

12月後半〜2月のいわゆる冬期・厳冬期について振り返ってみたいと思い
ます。


今期のTopicは年末・年始の剱岳・早月尾根と2月の八ヶ岳・真教寺尾根
になります。


早月尾根は秋くらいから浮上していた計画で気合いも十分だったので
すが、11月後半から12月にかけて昨年よりも降雪が少なく、あまり良い
準備もできず、本番突入となりました。現地に行ってみるとクリスマス
寒波のおかげで十分な雪量がありました。

6日間かけてピークを踏み、戻ってくることはできたのですが、
山のレベル>自分のレベルというのは明らかであり、優秀なリーダー
に登らせてもらった、引っぱり上げてもらった山行でした。
山行の途中からはアタックに備えてとにかく、自分のコンディションを
崩さない、ということに集中することに切り替えました。

剱岳・早月尾根という冬山を始めた者なら誰もが一度は行ってみたい
というルートに”登ってしまった”のは自分にとって良かったのか良く
分かりません。
それでも、早々と下山するパーティーが多い中で、安全なところで
粘って少ないチャンスをGETするというリーダーの判断には学ぶところ
がありました。


2月の八ヶ岳・真教寺尾根は天候は悪いというのは分かっていたのですが
とにかく現地に行ってみよう!ということで決行。
コンディションが良ければ1日で抜けられるルートを3日間かけました。
スーパーラッセルでした。1時間でどのくらい進めるのか?という計算が
全くできない中、ジリジリと進むのはぐったりするのですが、充実感も
大きかったです。今、自分が持っている技術・体力・経験を出し切った
と言える山行でした。


岳人3月号に載っている佐藤さんによる厳冬期黒部横断レポートの中で
「ここ(黒部・剱)では計画通り山行を終えることが第一の目的ではな
い。与えられた条件の中でいかに もがき続けることが重要なのだ。」
という一文がありますが、いつか自分もこういう山行をやってみたいと
思っています。

雪山に行くと、昨シーズンよく一緒に行っていた韓国人のOっちゃんが
「日本は雪の量が多い。韓国は寒いけどこんなに雪は降らない。」と
言っていったのを思い出します。私にとっては当たり前のことも外の人
から見ると驚くこと。新鮮な見方でした。
考えてみれば、日本海があるおかげで降雪量が多いわけで日本人として
生まれたからにはこの環境をもっと楽しまなければ!と思います。


シーズンを通して振り返ってみると、計画性がなく行き当たりばったり
のシーズンだったのが残念です。冬になってから冬のことを考えるので
はなく、夏から冬の計画を立てないといいシーズンを過ごせない、という
のを痛感しました。

来シーズンは11月に入って冷えてきたら小同心クラックを登り、
結氷したら裏同心ルンゼ、12月中旬は北アの常念などでミニ合宿、
年末年始は槍ヶ岳、1月は八ヶ岳でアイス、2月は・・・
という感じでシーズンを通しての計画を立てて開幕に臨みたいと思って
います。

2011年3月22日火曜日

気になるモノ

今月発売のアウトドア誌を見ると道具系のPEAKSはもちろん、
ヤマケイも山道具特集。本屋でぱらぱらっとめくったくらいだが、
いくつか気になるモノがあった!

まずは

①SOTOのガソリンストーブ

プレヒート不要らしい。ガソリンストーブは運用が面倒くさいので
あまり使う気にならないが、これは気になる。
しかも、ホワイトガソリンはもちろん、自動車用のガソリンを使って
もススが出にくいとか・・・
ちゃんと使えれば圧倒的なコストダウンが可能だ!
ホワイトガソリンは 1ℓ=1,200円くらいだから




②OSPREY Honet (46ℓ)

46ℓで660gは軽い!
夏の1泊2日だったらこれでOKでは!?




③ファイントラックのアウター
ついにアウターが!
しかも、素材はエバーブレス® バリオ。
なんじゃそりゃ!
オリジナルの素材で出してくるところがらしいが・・・
ゴアで出してきたら、みんながっかりだよね。。



2011年3月21日月曜日

まほうのことば

ポポポポ~ン♪

2011年3月19日土曜日

この週末はTVの前を離れて遊ぼう!

先週の
金曜日→帰宅難民
土曜日→TV漬け
日曜日→TV漬け
月曜日~金曜日→仕事

という一週間を送ったのですが、土、日は普段、全く見ない
TVを見て過ごしました。あれから数日が経ち思うのはTVの
影響はあまりに大きい、ということです。

津波が街を飲み込んでいく映像や原発が水素爆発を起こす
シーンのハードリピート。
増え続ける、死者・行方不明者の数・・・
思わず息を止めてしまうような瞬間の連続です。

これが現実だとしても見続けると、どうしても

意味もなく涙が流れたり、
日本沈没か!?
仕事は?経済は?
これからの日本はどうなる??
となってしまいます。

これでは東北の復興の前に自分が疲れてしまいます。

それではいかん!!
この週末はTVの前を離れ
飲んで、食べて、遊んで笑いましょう~~

今日はクライミングジムに行ってきます。

<<参考記事>>
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20110317/219021/?bvr

2011年3月17日木曜日

ユルネバ

バルセロナ-セビージャ















オールド・トラフォードでの一戦の前に黙祷する
ユナイテッドの選手たち
















UEFAも日本の震災被災者を追悼













モウリーニョ「深刻な問題とは今日本で起こっていること」


















もし今年がダメでも来年がある。
もし今シーズン、精一杯戦い、ダメだったとしても
それは深刻な問題ではない。深刻な問題というのは、
今、日本で起こっていることを言うんだ





内田 篤人





















長友 佑都















その瞬間、スタジアムには
「You’ll never walk alone」
が響いた。


槙野 智章















Japanese flag





















2011年3月16日水曜日

水曜日

昨夜は静岡を震源地とした大きめの地震があり、我が家でも揺れを
感じました。tenki.jpを見ると岐阜県飛騨地方を震源とする地震が増えて
いるようです。

コンビニに行ってみると、久しぶりに食パンが棚にならんでいたので
嬉しくなりました。報道によると首都圏でも買い占めが起きてるらしい
ですが、近所のコンビニはお客さんが少ない(?)せいか比較的、
物は豊富に並んでます。

月曜日は休刊していたサッカー専門新聞『EL GOLAZO』も本日は
発売されてました。


そろそろ反撃開始!といきたいところです。

2011年3月14日月曜日

月曜日(2)

結局、バスと田園都市線を使って出社。途中、渋谷で山手線に乗り換えたが
『静か』だった。いつもはやかましいスクランブル交差点は映像も音もなし。



会社に到着後、とりあえず今年度お世話になった人たちにTEL、メールで
連絡を取る。TELはつながりにくかった。TELの向こうの声も明るくはない。
いつも以上にテキパキと予定していた案件の状況を確認し、片付けていく。
当たり前だが、取引先の仙台の拠点は全面的に営業中止で、スケジュールさ
れていた、いろんなことが無期延期になった。
今日、予定していた打ち合わせは全てキャンセルになったのであっという間
に仕事は終わった。

ニュースをチェックすると『牡鹿半島に1000遺体 南三陸でも1000遺体』
というヘッドラインが目に付くが、クリックして全文を読む気はしない。
気が狂いそうだ。

マスゴミの中には東京電力の対応が二転三転した、と批判している人がいる
が自分はとてもそんな気になれない。ぎりぎりの状況でベストを尽くして
いると思う。こんな状況で手を抜いている人がいるとはとても思えない。
爆弾の中心のようなとこでミスの許されない作業を長時間、続けることが
どれだけ精神的にすり減るか想像できないのだろうか。
実際、ケガ人も出ているし、本当に体を張っていると思う。

Jリーグも3月の試合は全て中止になった。今は勝った、負けたと一喜一憂
する気にはとてもなれないので当然だろう。海外でプレーしている日本人
選手のメッセージやクラブ、例えばリバプールのYou'll Never Walk Alone.
を読むと少しだけほっとした気分になります。

落ち込んだ日本の空気をチアアップするためにプロスポーツの力が必要な
ときがくるはず。今はこれ以上、悪いニュースが増えないのを祈るばかりだ。

月曜日

東京電力による計画停電のため、小田急線は新宿〜経堂しか動いていない。
通常通り、仕事に向かうのは難しい状況だ。
もちろん、こんな悩みは東北の方に比べれば大したことはないのだが。

広域の大津波とか、原発の事故、電車が動かない・・など現実離れしすぎ
て未だにこれが現実だ、と認めたくない自分がいる。

先日、マン喫で読んだ『GANTZ』や『進撃の巨人』みたいなマンガの
世界のようだ。

寝て起きたら金曜日の朝の状況に戻ってて欲しい、と思う。

地震に襲われた後、
神田から虎ノ門まで歩きながら、自分がいかに無力か思い知らされた。

冬山のような厳しい環境でも、自分の性能が落ちないのは、
事前に情報(ガイドブック、地図)を集め、その環境で生きていける
だけのシステム(防寒性の高い衣類、テント、シュラフ、燃料、食料)
を持っているからだ。

何の予告もなく交通が麻痺した東京の真ん中でスーツ、革靴、コート
なし、鞄の中は打ち合わせのための資料しかなかった自分は”生きて
帰れるのか”本当に怖かった。気温が低く寒いし、雨も降ってくるし・・

機能が停止した東京はある意味、一番厳しい環境なのかもしれない。

本当に早く日常に戻ることを願う。

2011年3月12日土曜日

地震

神田駅の構内を歩いてたら身体が斜めになった。
あれっと思ったら強い揺れ。

最初の揺れの後も断続的に揺れる。
電車に乗ってなくて良かったと思う。
電車が動く見込みがないので、駅の外に出た。

周りのビルから出てきた人で一杯だった。
余震が来ると車もストップ。人も道路の真中
に固まる。駅の周りは人がたくさん。

電車はもちろん動かない。
バスは不明。
タクシーはつかまらない。
携帯電話もつながらない。
上空にはヘリ。
走り回る特車(パトカーと救急車、消防車
どうしていいのか分からず、みんな駅の周りで
ボーッとしてる感じ。
かっといってパニックになってるわけでもない

吉野家は普通に営業してる。

とりあえす、虎ノ門にあるオフィスまで歩く。
長期戦を覚悟し、ベローチェで補給し、本屋
に寄る。

帝国劇場の周り、ホテルオークラのタクシー乗り場、
丸の内警察は人、人、人

建物の倒壊がないからみんな、落ち着いてるようにみえるけど
もっと大きな被害がでたらどうなるんだろう?

オフィス到着後、ネットで情報収集。
電車は点検のため、動くまで時間がかかりそう。
窓から見える道路はものすごい渋滞だ。
歩いて帰るには寒いし遠い。

総合的に考えてオフィスで一夜を明かすのがベストと
判断

2011年2月14日月曜日

八ヶ岳 真教寺尾根



2/11-13の3連休。本当は真教寺尾根から赤岳東稜を経て赤岳、
横岳、硫黄岳を通り、GOALは渋ノ湯という欲張りな計画を
立てていた。
バリエーション入門の赤岳東稜でナイフリッジの雪稜を通り、
東面なので日の出を見て、滑落の絶対許されない横岳周辺の
緊張感のあるトラバース、そして最後は温泉・・・と雪山の
魅力を十分詰め込んだ計画のはずであった。

週中から毎日、天気予報をチェックしていたがどうも良くない。
11日は東京でも雪が降るということであった。
実際、新宿から電車に乗ったときは雪ががんがん降っていた。
ならば八ヶ岳はどうなっているのか?

天気は心配であったが、入山口の真教寺尾根ならば、先月、
下見したばかりだし、危険なところもないので最悪、
真教寺尾根から西面に抜ければいいや、ということで出発した。

現地に行ってみると先月とは比べ物にならないくらい雪が
多く、連日、ラッセルであった。
赤岳東稜に取り付くことすらできず、心教寺尾根から赤岳
に登り、美濃戸に下山するのが精一杯であった。


2011年2月5日土曜日

阿弥陀岳北稜



1月は剱から帰ってきてから3回、八ヶ岳に通った。
1月29日〜30日は阿弥陀岳 北稜へ。
わずか2ピッチのバリエーション入門コースだが、リードの
経験がほとんどない、自分にはお手頃に思えた。


2011年1月29日土曜日

180°SOUTH



渋谷のシネクイントで1/22から上映されている映画、
180°SOUTHを見てきた。


“パタゴニア”創業者 イヴォン・シュイナード“ザ・ノースフェイス”創業者 
ダグ・トンプキンス。 
2人の運命を180°変えた伝説の旅があった。 そして今、ひとりの青年が
その軌跡をたどる―。

仕事帰りだったので眠くなるかな、と思ったが最後まで眠らずに見れた。

内容は平凡だけど、映像は美しかった。
監督がサーフフィルムを得意としている人のようで
サーフの撮り方で山を撮るとこうなるのか、と思った。
単純にイースター島やパタゴニアに行ってみてえなあと思う。

一番、印象に残ったのはパタゴニアのコルコバト山を目指す途中のキャンプで
イヴォンが吐いたこのセリフ。

『私が今、いたいのはまさにここだ。過去でも未来でもない。
 この瞬間を大切にしたいと思う。』

でも私はこう思ったのです。

2011年1月21日金曜日

PEAKS 2011年2月号



最近、注目している雑誌がある。PEAKSである。
創刊されてこの号で15号目である。当初はどうせ、すぐに休刊(廃刊)
になるんだろうな、と思っていたが、続いているのである。

以前は『山道具』のインプレッション雑誌という存在であったが、
最近は企画が充実してきている。ターゲットは、これから山に登って
みよう、という人たちなのだが、『山の旅メシ』やギア・メーカーに
ついての記事(今月はモンベル、今までスノーピークやORが取り上げ
られている。)、シェルパ斉藤の山小屋についての記事はは毎月チェック
してしまう。

また、業界人へのインタビューが毎月一人づつあるが、最近は
坂下 直枝(ロストアロー代表)
鈴木 みき(イラストレーター)
横山 勝丘(アルパインクライマー)
と脈絡はないものの、コアな面子が出ている。


完全に窮地を脱出したときに感じる『俺は生きているんだ』という実感
ほど強烈なものはありません。・・・ただ、それを求めて山に登るかと
いえば、そんなことはない。(坂下 直枝)

(アラスカで友人2名が遭難して帰ってこなかったので)
『人はいつ死ぬか分からない』やりたいと思ったことは、やりたいと思
ったときにやらなきゃと考えた(横山 勝丘)

など、読ませる良い記事になっています。

山○渓谷を超える雑誌になることを期待します。


2011年1月17日月曜日

空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む --角幡唯介--



世界最大の規模を誇るチベットのツアンポー峡谷、私はそこを探検しよう
と思っていた。人跡未踏と言われるこの峡谷の初踏査をやってやろうとい
う野心家は、この100年でざっと20人から30人はいただろう。だが
完全に成功した人間はまだいなかった。私はそれに挑戦するつもりだった。
日本を出発したのは2002年12月10日、単独行だった。


まだ、人類が立ち入っていない、秘境の探検行・・・
魅力的である。また、本の帯にも開高健ノンフィクション賞受賞!とか
茂木健一郎氏を初めとした推薦コメントがずらり、書かれている。

のでかなり期待して読み始めたが、、正直、物足りない。

あまり聞き慣れないツアンポー峡谷がいかに厳しい環境にあるのか
読者に分かりやすくするために、これまでの探検史をコンパクトに
まとめてあったり、近年起きた日本人の死亡事故が詳しく書いてあった
り、著者のツアンポー峡谷に対する熱い思いは伝わってくる。

が、どうして〜〜も、本の世界にどっぷり入れない。
文章力が沢木耕太郎や佐瀬稔といったノンフィクションの大家に遠く
及ばないのはしょうがないとしても、クライマー(探検家?)が書いた
本と比べても、『垂直の記憶』や『サバイバル登山家』よりも完成度
は落ちる。。(と思う。)


構成に凝りすぎているような気がして、もう少しシンプルにして
スピード感を出した方がよりおもしろい本になる気がする。
テーマは素晴らしいと思うので・・・

2011年1月11日火曜日

『残された山靴』--佐瀬 稔--




帯にある『志半ばで山に逝った登山家8人の最期』とある通り、
佐瀬 稔(故人)が近代・日本登山界のレジェンド(長谷川恒男、
森田  勝、小西 政継etc・・)の”最期”について書いた本。

レジェンド達の関係や当時の業界内での立場がコンパクトに
まとめられています。エベレスト(8,000m over)で長谷川恒男が
隊の仲間を助けにいくシーンは超人的です。それがきっかけで
長谷川は単独登攀に傾斜していくらしいのですが・・・


へえーと思ったのは長谷川昌美さんのあとがきでした。
長谷川恒男がウルタルⅡ峰で亡くなったのが10月10日
→だからハセツネも10月10日前後の休日。

2011年が20回忌になるのでハセツネの第3関門である御嶽神社
の境内内にモニュメントが建つそうです。

2011年1月6日木曜日

劔岳 早月尾根



1月3日 14:30 劔岳の頂上から早月尾根を下山開始する。
頂上直下のガリーを顔を壁側に向けてクライムダウンを始めた矢先、
左足とピッケルを持った右手が壁から離れた。バランスを崩し体が
背中側にフラッと流れたような気がした。慌てて目の前にあった
残置スリングを掴む。

今、、、滑落しかけた・・・・よネ??

体勢を立て直し、下を覗いてみる。
音もなく、し〜〜んとしている。
もし、滑落したら池ノ谷と東太谷のどちらに落ちたのだろうか??
どっちに落ちても秋まで死体は浮かんでこないのだろうか??

なんでこんなところに来てしまったのだろう?
心の底から後悔した。
早月小屋の近くに張ったテントを出発したのが7:30。
それから、7時間が経過しているが、体はまだ山頂の近くにあり
テントに辿り着くのはかなり先のように思えた。
一番、気温の高いはずのこの時間帯でも手元の温度計はマイナス15℃。
風が弱いため体感温度はそれほど寒く感じないがこれから気温は下が
っていく一方である。
登頂はなんとかできたが、心身共に疲労困憊で山頂からの素晴らしい
景色を楽しむ余裕は全くなく、せっかく持ってきたカメラを取り出す
気力もない。今の望みはテントで暖かいコーヒーを飲み、シュラフの
中でぬくぬくと眠りたい。そんなささやかな希望も、もしかしたら現
実にならないかもしれない。そう思ってしまう。

冬の劔は自分には早過ぎたのだ。
技術、体力、精神の全てで自分の実力を遥かに超えている。
泣きたくなってくる。ここで涙を流したら、涙もすぐに凍ってしまう
のだろうか。

でも無事に帰らなくては。
冷静に気持ちを立て直そう。テントまで無事に帰る。これは今の自分
には遠い目標に思える。こういう時は仕事でいつもやっているように
大きな目標を小さなタスクに分解してみよう。
今、自分がやらなくてはいけないこと、できることに集中しよう。
まず、このガリーをちゃんと降りてみよう。この局面だけに限れば
過去にもこういう場面は何回もあった。

まず次に自分の足を置く位置を確認してから足を置く。その時にアイ
ゼンが壁から剥がれないように踵は必ず下げる。ピッケルのピックが
効いていることを目で確認する。この繰り返しで降りられるはずだ。