2010年4月4日日曜日

自分が死にそうなのが分からないのか。  『垂直の記憶』--山野井 泰史--

『垂直の記憶 岩と雪の7章』 著:山野井 泰史

標高六一〇〇メートル付近を登高中のことだ。上部で『ドーン』
とセラックの崩壊らしき音。・・・逃げるのは不可能と感じた
僕は、妙子に『構えろ!構えるんだ!』。それだけを叫び、自分も
アイスバイルを雪面に叩き込む。その一、二秒後、・・・・・
僕は飛んだ。(第五章)


今さらですが、山野井さんの『垂直の記憶』を読みました。
この本、おもしろいです。



シンプルだけど的確な表現で、山野井さんが何を考えて、どう行動し、
何を感じたのか?書かれているので、山野井さんと一緒にヒマラヤに
登ってる気になる(かも?)

標高6,000m~8,000mの世界での難度の高いクライミング、しかもソロも
あったりする。想像を絶する世界です。

エキサイティングな本なのですが、休みながらじゃないと読めません!
なんせ、
8,000mでⅣ級の壁を越えるムーブの後、酸欠のせいで目が見えなくなったり
(あれ、シャッターが降りてきたよー!)
雪崩に流されてコンクリートのような氷と雪の下に埋まったり
(シーン)
そして有名なギャチュン・カンでの懸垂下降。
雪崩に流されてしまった妙子に合流するために懸垂下降で降りていく。
ゴーグルが飛ばされ、眼球が凍ったのか目が見えなくなった。
グローブを外し素手で支点を作るためのクラックを探す。
支点が確実に効いてるかは指で方向を確かめ、音で聞き分けるしかない。
雪崩のせいでロープが切れかかっているので一度の懸垂下降で15mくら
いしか下降できない。
妙子に合流するためには四回の懸垂下降が必要であった。
(これに至っては呆然とするしかありません!)

いわゆるトップアスリートが書いた本はこれまで何冊も読んで
きたけど、これほど、『死』を感じさせる本はなかったと思う。

数日間、飲まず食わずの体で、最も効率のいいムーブを『自動的に』
選択して休まず登り続けるクライミングマシーン・ヤマノイ
猫が2、3日帰ってこないとオロオロする人間らしい山野井さん

山のことを考えない日はない、という山野井さんですが、他のことを
犠牲にしてクライミングに懸けているという感じはなく、あくまで
自然体。悟りを開いた僧侶のようです。

この本、めっちゃおもしろい。オススメです!

是非〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!


一般的には『山は逃げない』と言われるが、チャンスは何度もやって
こないし、やはり逃げていくものだと思う。だからこそ、年をとった
らできない、今しかできないことを、激しく、そして全力で挑戦して
きたつもりだ。

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